オチビサン歳時記 第四回「金魚」 | MOYOCO ANNO

オチビサン歳時記 第四回「金魚」

オチビサン歳時記 第四回 〜金魚〜

風鈴、浴衣、麦茶、打ち水、かき氷……
涼を呼ぶ夏の風物詩はいくつもありますが、
見て涼むといえば、金魚ははずせませんね!
オチビサンがやってきたのは、露天の金魚屋さん。
たらいの中で、鮮やかな金魚が涼しげに泳いでいます。
どの子をつれて帰るのかな?

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地金、蝶尾、丹頂、浜錦……、風情のある名は金魚の品種です。日本では約30種類がみとめられていますが、なかでも親しみ深いのが「和金」でしょう。

金魚すくいでおなじみの和金は、金魚の祖先に最も近い形をしています。「和」とつくので日本原産と誤解されますが、金魚は中国生まれ。約1700年前、揚子江下流域で突然変異の赤いフナが発見され、それを改良して金魚は作られました。日本に伝わったのは室町時代。江戸時代に新品種が輸入されると、すでにいた金魚は区別され、和金と呼ばれるようになったのです。和金は丈夫で、成長すると30㎝にもなります。15年以上生きるものもいるそうで、金魚は意外と長寿なのですね。

初めはお金持ちの娯楽だった金魚の飼育。江戸時代には庶民も飼うようになり、「めだかぁ~金魚ぅ~」という金魚売りの声は、夏の風物詩でした。ガラス鉢などない時代ですから、焼き物の器に入れて上から観賞しました。ツウは今でも「上見うわみ」と呼んで、この観賞法を楽しみます。

オチビサンが選んだ金魚は、丸い背や優雅なひれからすると、琉金かもしれません。美しい色柄でも、ルーツはフナ。その名残でしょうか、金魚の稚魚はフナに似た淡い黒色で、後から艶やかな色へと変わります。そしてこれもフナの習性で、金魚は群れを好みます。オチビサンには、ひとりになる金魚の不安が伝わったのかもしれませんね。

文/ かなだ たえ

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