オチビサン歳時記 第六回「蚊遣り」

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オチビサン歳時記 第六回 〜蚊遣り〜

ぷ~ん ぷ~んと、耳元で眠りをさまたげる蚊の羽音。
みなさんの家では、どうやって退治していますか?
窓をぴったりしめてエアコンをつけるから、
蚊は出ないというお宅も多そうですね。
ナゼニがもってきたのは、もちろんアレ。
世界にも輸出されている、日本生まれの渦巻きです。

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蚊取り線香が誕生したのは明治時代。殺虫効果をもつ除虫菊という植物がアメリカからもたらされ、それを原料に、金鳥の商標でおなじみの会社「大日本除虫菊」が作りました。

初めは粉末で、やがて棒状の線香型になりましたが、短くてすぐ燃えつきます。そんなとき、初代社長の妻が庭でとぐろを巻いたヘビを見つけ、渦巻き型を思いついたのだそうです。おかげで、金鳥の渦巻きは1巻が75㎝、約7時間蚊を退治できるようになりました。

ちなみに、血を吸うのはメスの蚊だけ。卵を産むための栄養源で、ふだんは植物の汁などを吸っています。そして刺されるとかゆくなるのは、血が固まるのを防ぐために蚊が注入する液のせい。「血を吸ってもいいからかゆくしないで」は、ムリそうですね、オチビサン。

ところで、蚊取り線香ができる以前、人々はどうやって蚊を撃退していたのでしょう。その方法が、鎌倉末期の随筆『徒然草』に描かれています。

――六月のころ、あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり

蚊遣りとは、ヨモギの葉や松などの木くずを焚いて、その煙で蚊を追い払うこと。陰暦六月は夏の最後の月で、粗末な家の塀をつたう夕顔の白い花や庭先でくすぶる蚊遣火を、兼好法師は「趣がある」と感じたのですね。

今では電気式や高周波音で撃退するアプリまで登場し、便利な一方、“もののあわれ”は失われてしまった蚊の退治。縁側の窓を開け放って蚊取り線香をたけるオチビサンたち、じつはとても贅沢な夏の夜を過ごしているのかもしれません。

文/ かなだ たえ
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