『季刊エス』インタビューより④ー流行と女の子ー

―時代を変えることで象徴化されるところもあるんでしょうね。それに現代より、ビジュアル的にドキドキさせられるところも多かったです。インテリアや衣装など、あの時代が持っている様式美が刺激的でした。それを描きたいところもあったのではないかと思います。

安野:もちろん。でも、例えばナナは長い髪をしているけど、高級娼婦は流行の最先端にいる存在だから、本当なら短い髪をしているはずなの。ただ、その時代のすごく売れている子の中には「みんながしているから、私はこういう髪型はしない!」と思う人が絶対いるはずで、そういう子だったら逆にこの髪型かな、と思って描いたんです。当時の写真を見ると、みんな短い髪型をしているんですけど。

―ベルエポックくらいでは、一般の人は髪を上に結い上げていますが、カルチャー的に進んでいる人はみんなこの髪型ですね。

安野:それまでは、こんな短い髪型はあり得なかったから、やってみたかったんじゃないかな。ずっと髪を長くしていて、洗うのも結うのも大変だったんだよね。短くなったらお風呂でしょっちゅう頭を洗えるし、楽しくてしょうがないと思う。あと、この時代の人たちはパーティとかで、死ぬほど激しく踊るでしょう? エネルギーがあふれまくっている。「動けるぜー!」と。それまでは、長いドレスにコルセットでしずしずとしか歩けなかったんだから、すごい解放感だったと思う。

―髪型については、『シェリ』を書いた作家のコレットも、元は田舎娘で長いおさげだったのが、パリに出てきてショートカットにして、カルチャースターになっていきましたね。物書きであるところも、『鼻下長』の主役のコレットと重なります。

安野:もちろん要素にコレットは入っているので。ボツにしちゃったんだけど、最初はコレットが田舎から家出してきて、一回結婚したんだけどダンナのDVがひどくて家を飛び出したという設定もありました。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

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