掲載情報・『MY HAIR ARRANGE』が本日発売

顔まわりの印象を大きく変えるヘアは、おしゃれをする上で重要なポイント。
“もっとおしゃれに、もっとかわいくなりたい”
そんな女子の強い味方、ヘアアレンジブック『MY HAIR ARRANGE』に、安野モヨコが参加しました!

myhairarrange表紙

instagramで安野モヨコが描くおしゃれ女子と、Brillantの人気スタイリスト・Mariさんがコラボ♡
こだわりの計6スタイルを、モデルの八木アリサさんと一緒にご紹介しています。
アレンジの方法はもちろん、いつものスタイルに取り入れたいプロの方のテクニックは必読♪

全国の書店、またはこちらでチェックしてみてくださいね♡

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(スタッフ・美帆)

2015/09/28 9:14

『季刊エス』インタビューより⑤ー漫画の枠を越えた創作についてー

―そのあたりのテーマは本当に面白いです。今後も『鼻下長』を読む上で追っていきたいと思っています。それでは少し話は変わりますが、安野さんの作品は、雑貨になったりしていますよね。『鼻下長』でも下着メーカーとコラボで、下着を作られると聞きました。

安野:楽しいですね。クラシカルなムードで、ビスチエにガーターがついているものをデザインしました。下はショーツ。パニエもつけたかったんだけど、それは今回はつきません。

―実際に、『鼻下長』の漫画の中でキャラクターが着たりするんですか?

安野:うん、出したりする。

―それは楽しみです。『鼻下長』の下着もそうですけど、『オチビサン』でも雑貨がいろいろと作られていますね。今、絵を描く人の間で、「自分で雑貨を作りたい」という気運が高まっています。例えば自分の絵は、漫画っぽくもあるけど、絵本やファッション的な要素もある。漫画やライトノベル、ゲームの仕事とは違うかも…という人たちも、雑貨ならしっくりくるそうで。

安野:なるほどね。「エス」の投稿者たちの絵は、背景とキャラクターがセットだから。キャラクターだけが目立って、CGの技術で立体感があるというゲームキャラみたいな絵とは違うよね。

―安野さんは漫画を描きながら雑貨や展覧会活動をはじめた先駆者だと感じるのですが、きっかけとして墨流堂がありましたよね。紙版画集の『蔦と鸚鵡』でも巻頭にその図案が入っていました。(墨流堂:安野さんが「紙」にこだわって作っていた雑貨)

安野:あれは包装紙みたいなものを作りたかったんです。本当はポショワールみたいに「印刷が載っている感じ」の風合いにしたかったんですけどね。特殊な紙でやらせてもらえたから嬉しかったです。カードや便せんを作っていましたが、当時は本当に欲しいレターセットがなかったんですよ。和風な雑貨を見ても、ちょっと違うなと思っていましたから。でも、今はすごくいっぱいあるの。ぜんぜん私よりセンス良く植物をデザインしているものが増えて、良かったなあと思います。

―普段描いているのは、キャラクターじゃないですか。植物をモチーフにした図案を作ろうというのは、グッズではなくて本格的ですよね。とても素敵でした。

安野:今もやりたいけどね。例えば、カラスウリをモチーフにしたものも作ったけど、結局やってみると、昔の植物のデザインがいかに優れているかに気づくんです。あの時代の人たちは、植物を写生した絵も凄く上手いんだよね。何枚も何枚もスケッチして、それを最後に図形化している。しかも、すでに図形化されたものが常に身の回りにある環境でしょう。着物の柄もそうでしたから。常に目に入っているエッセンスが混ざった上での完成度。自分が作ると、どうしても今っぽい感じが入っちゃって、やはりプラスチック感が否めない。難しいことだと思うけど、続けてやっていった方が良いと思いますね。

―墨流堂とあわせて、『オチビサン』の展覧会が大阪や東京でおこなわれ、そうして「まめつぶ屋」が出来ましたね。

安野:グッズを作る会社の方が『オチビサン』が凄く好きで、「やりたい!」と言ってくれたんです。最初に作ったのは、私がデザインしたポチ袋でした。手ぬぐいなどが最初の商品ですが、向こうにもデザイナーさんがいるので、あとはもうお任せして。『オチビサン』を好きな人が集まってくれて、とても可愛がってくれています。みんなで「ああしよう、こうしよう」と作ってくれている。

―まめつぶ屋もいろんなところに出展したり、展示もずっと巡回していますよね。滅多にないことだと思います。

安野:まめつぶ屋さんとコルクがやってくれていることなんです。私は、ほぼ漫画の『オチビサン』を描いているだけだから。でも、そういうのを全部私の活動として、皆さんが見てくれているんですよね。でも自分一人じゃとてもできない。だから、若い子たちが「自分でやろう!」と思って、小規模な範囲でグッズを作って、自分の世界観を漫画だけじゃなくて、例えば「お茶碗はこんなのを使っています」という風に、その世界に浸ってもらえる装置を作っていくのはすごく良い考えだと思います。それを具体的にやっていくのはすごく創造的なことだと思う。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

2015/09/26 7:25

『鼻下長紳士回顧録』特設サイトがオープン!

8年ぶりのストーリー漫画『鼻下長紳士回顧録』の単行本化を記念し、作品の特設サイトを本日12:00にオープンいたしました!

パリの夜の片隅で開かれた、メゾン・クローズの扉。
あなたもきっと虜になる『鼻下長紳士回顧録』の世界を、覗いてみませんか?

http://annomoyoco.com/bikacho/
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安野モヨコが8年という月日の中で思い描いていたことや、
待っていてくれたあたたかいファンの皆様への感謝の気持ち…
たくさんの思いを散りばめながら、全てをかけてを生み出した作品『鼻下長紳士回顧録』。

特設サイトでは、
▼あらすじ&キャラクター紹介
▼ダウンロード可能のイラストギャラリー
▼音楽家・鷺巣詩郎氏による鼻下長のための書き下ろし楽曲
▼アニメ(ーター)見本市で発表された動画の特別公開
などなど、”鼻下長”の世界観をたっぷりとご覧いただけます!

またオフィシャルストアでは、単行本の予約販売もスタート。
豪華な特装版&通常版、2種類どちらも特典付きとなります!

またこの度は、安野モヨコによる描き下ろしのカードや、本人がデザインしたコラボランジェリーも制作いたしました。
数量限定となりますが、1つ1つこだわりを尽くしてご用意しております♪

全貌は、『鼻下長紳士回顧録』特設サイトをチェックしてくださいね!

http://annomoyoco.com/bikacho/

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公式サイト:http://annomoyoco.com/

公式ブログ: title="http://lineblog.me/annomoyoco/">http://lineblog.me/annomoyoco/

(スタッフ・美帆)

2015/09/26 5:52

『季刊エス』インタビューより④ー流行と女の子ー

―時代を変えることで象徴化されるところもあるんでしょうね。それに現代より、ビジュアル的にドキドキさせられるところも多かったです。インテリアや衣装など、あの時代が持っている様式美が刺激的でした。それを描きたいところもあったのではないかと思います。

安野:もちろん。でも、例えばナナは長い髪をしているけど、高級娼婦は流行の最先端にいる存在だから、本当なら短い髪をしているはずなの。ただ、その時代のすごく売れている子の中には「みんながしているから、私はこういう髪型はしない!」と思う人が絶対いるはずで、そういう子だったら逆にこの髪型かな、と思って描いたんです。当時の写真を見ると、みんな短い髪型をしているんですけど。

―ベルエポックくらいでは、一般の人は髪を上に結い上げていますが、カルチャー的に進んでいる人はみんなこの髪型ですね。

安野:それまでは、こんな短い髪型はあり得なかったから、やってみたかったんじゃないかな。ずっと髪を長くしていて、洗うのも結うのも大変だったんだよね。短くなったらお風呂でしょっちゅう頭を洗えるし、楽しくてしょうがないと思う。あと、この時代の人たちはパーティとかで、死ぬほど激しく踊るでしょう? エネルギーがあふれまくっている。「動けるぜー!」と。それまでは、長いドレスにコルセットでしずしずとしか歩けなかったんだから、すごい解放感だったと思う。

―髪型については、『シェリ』を書いた作家のコレットも、元は田舎娘で長いおさげだったのが、パリに出てきてショートカットにして、カルチャースターになっていきましたね。物書きであるところも、『鼻下長』の主役のコレットと重なります。

安野:もちろん要素にコレットは入っているので。ボツにしちゃったんだけど、最初はコレットが田舎から家出してきて、一回結婚したんだけどダンナのDVがひどくて家を飛び出したという設定もありました。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

2015/09/25 8:25

『季刊エス』インタビューより④ー安野モヨコが描く変態とは?ー

―なるほど、気になるところですよね。変態というのは、作中では「自分の欲望の形を見つけた人」として描かれていますね。

安野:尊敬の念があるからね。普通の人は「自分はどうしてもこれがやりたい!」なんて思わずに、ぼんやりしたセックスをしているでしょう。それに対して、「どうしてもこうじゃないと嫌なんだ!」というのは、凄いことだと思うんです。

―先ほど、パリにデパートが初めて出来たというお話をしましたが、「服が欲しい!」という欲望は現代にもつながるとして、よく考えると本当にその服が欲しいのか?次々買っては捨てるような、代わりのある欲望に対して、紳士の「唯一の欲望」という対比が印象的でした。

安野:純粋なんだよね。だって、代わり映えなくずっとそれを求めるわけじゃない?女の子たちは、「みんなが持っているから」という理由で新しいものを欲しがったりするけど、それは逆に「薄い」というか、単純な欲望かもしれない。

―安野さんが以前言っていたことをよく覚えています。「自分へのご褒美」でスイーツを食べたり、ショッピングをする人がいるけど、それで満たされなかったとしたら、本当は求めていないんじゃないか、と。心を癒すにも、自分が本当に好きで、本当に幸せになるものは何かを見つけることが大事だって。

安野:もちろんスイーツだって、目の色が変わるくらい、地の果てまで行く人がいるじゃない。そういう人は本当に満足していると思うけど、ぼやっとした感じで「パンケーキ食べたい♪」みたいな子は、本当に嬉しいのかちょっと分からない。

―意外とそういう人が、変態的なまでにスイーツを求めている人を「気持ち悪い」とか言いますしね(笑)。

安野:そう。おかしいでしょ? 純粋に「スイーツが好き」という気持ちの結晶みたいなものを持っている人のほうが正しいと思うんです。それこそ私生活に支障をきたすレベルだと思うんだよね。確かにバランスを取ってぼんやりしている方が、生きていくには良いと思うけど。でも、本気な人に対する尊敬…とまでは行かなくても、尊重はするべきだと思う。結局は自分の心をいかに観察しているかだと思うんです。「これが好きなんだ!」と、ハッキリ分かっている人は凄い。周りはぜんぜん見ないで、自分の内部に集中しているというのは、禅の修行に近いものがあるよね。内観法みたいな。

2015/09/24 8:02

『季刊エス』インタビューより③ーパリ取材で、安野モヨコが出会ったものー

―そんな設定も考えられていたんですか。それも大変な…。それでは次に娼館のデザインのお話に移りたいのですが、当時のインテリアなどはいろいろ見たりされましたか?

安野:パリに何回か取材に行きました。向こうでしか買えないメゾン・クローズの資料とか写真集もあるし。お勘定書きとかお品書きの写真とかね。
あと、建物の設計図。お部屋の中をこう区切って小部屋を三つ作ったとかがわかるんです。
あとは、その当時のパリの地図。どこにどの店があったのかを調べて、実際にその店に行ったりしました。
パリは景観を保存しているから、全部建物が残っているんです。
スファンクスがあった場所でも写真を撮らせてもらいました。階段とかはそのままなの。
お客さんが来る階までは手すりが凄く豪華なんだけど、女の人たちの居住区だった六階から七階は急に超簡素だった。
ハッキリとお金をかけていないんです。
あと地下室にも入ることができて、そこはちょっと驚愕するところでしたね。
今は物置なんだけど、けっこう手つかずで残っていて、作りが完全に秘密の接待部屋なんですよ。
だから、地下に降りる階段もおしゃれなタイルだった。お客様の外套をかけるフックとか、すごく装飾的な椅子とかアコーディオン型のストーブもあってカッコ良かったですよ。

その時の取材はラッキーなことばかりで、有名な娼館だったワン・トゥー・トゥーの建物に行った時は、職人のおじいさんが入口のリノベーションをしていたんです。
「この建物の写真を撮りたいんだけど」と言ったら、「何でだい?」と聞かれたので、
理由を説明をしたら、おじいさんは昔そこが娼館だったことを知っていて、「君たちはすごくラッキーだよ」と。
その時、まさに当時の扉を取り外すところだったの。
「この扉が当時のままここにあるのは、今しかないんだよ。だから、必要なら写真を撮りなさい」と言われて、いっぱい撮った。
専門的な人が見れば、蝶番の形で扉の年代が分かるんだって。

―漫画で描きたいと思うデザインがたくさんありそうですね。

安野:そうですね。でも、『鼻下長』のメゾン・クローズは豪華なところじゃなくて、わりと中堅クラスなんです。
取材の時に、超お金持ちになった高級娼婦のお屋敷を見に行ったんだけど、それはちょっとした城くらいのものだった。
装飾が凄すぎて、逆に描くのが大変過ぎる(笑)。

―娼館がどんどん華美になっていく感じは異常ですよね。

安野:競争みたいなものだったんじゃないかな。
「向こうが金箔を貼るなら、こっちはダイヤモンドだ!」みたいな。
昔の人ならではの素朴な感情で、無邪気なくらいですよね。
有名なのは、ルイ一五世様式の本物のベッドを競り落として、その上での「ルイ一五世プレイ」を売りにしていたりとか(笑)。
何が楽しいのか、さっぱり分からないけど(笑)。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

2015/09/23 7:25

『季刊エス』インタビューより②ー安野モヨコが見た、文化の循環ー

―『鼻下長紳士回顧録』(以下、『鼻下長』と略記)は二〇世紀初頭のパリが舞台ですよね。
以前、安野さんにポショワールのお話を伺いましたが、それも二〇世紀初頭のファッションプレートでよく使われた技法でしたね。バルビエの絵とか。

安野:あの時代のファッションプレートは、今のファッション誌に当たるものですからね。
今季の新しいモードをあれで配っていた。商業と美術の融合ぶりが私の好みなんです。
だって、お洋服が素敵でも売れなかったらしょうがない。
ただ洋服だけを描けば良いわけではなくて、お洋服を含めたシチュエーションを素敵に描いて、
「こんな風になりたいわ」と女の人に思わせなきゃダメでしょ。そのバランスが私のやりたいことに近いんです。

―全体的なデザインも素敵ですね。

安野:あの時代の洋服が好き、ということもあると思います。なぜ良いかというと、あの時代までは全部手縫いなんですよ。
人が裁断して手で縫った服というのは、着た時の立体感、フィット感がぜんぜん違う。
昔の写真が素敵に見えるのは、貧乏な人でも、着ている上着は人が縫ったものだからだと思います。
私たちは普通、機械で縫った大量生産の服を着ているじゃない?
気軽に着られるし、良いところもいっぱいあるんだけど、やっぱり何か違う。
言葉ではうまく説明できないけど、絵にすると変わってくるんですよ。
家具もそうだし、室内にあるものも全部そうだと思う。だから、絵としてはそういうものを描いていきたいと思います。

―あと、ポショワールで描かれたファッションプレートは、シルエットで見せるようなスタイルで、ポップな面もありますよね。それは漫画と親和性がある気がします。

安野:省略して見せる感じでね。少女漫画家たちも影響を受けていると思います。
バルビエを好きになって、改めて見てみたら、「私が子供の頃に好きだったこの先生のイラストは、ここからインスピレーションを受けていたんだ」と思ったものがいっぱいあります。
あと、日本の叙情画もかなり影響を受けていると思う。構図とかバランスもね。
ただ、もともとバルビエたちは浮世絵の影響で生まれたものなんですよね。
それを、また日本人が良いと思って取り入れる。文化交換というか、循環している感じがありますね。

―面白いですね。今はまた、日本の漫画が世界に影響を与えていますし、本当に循環していると思います。
バルビエといえば、『鼻下長』に協力としてクレジットされている鹿島茂さんはバルビエのコレクターで評論も書かれています。
安野さんは鹿島さんと対談もされていますが、どんな刺激を受けましたか?

安野:鹿島先生は尋常じゃないお金を古本に使っているんですよ。
たくさんエッセイを書いているけど、それも全部古本を買うためですから。
そういう「やり切り感」に、私は昔の世代の人の凄さを感じる。
今でもオタクのコレクターはいるけど、古本の場合は買うことにも技術が要りますよね。
お金さえ出せば誰でも買えるわけじゃなくて。古本屋の主人との駆け引きも必要。
いつも良い本を買って「さすがだね」と思われているからこそ、次に入荷する特別な本を教えてもらえたりする。
長年の積み重ねもあるんですよね。そうして買った本をたくさん読んで、自分の家の裏庭のようにパリのことを語っておられる。
漫画を描いていて苦労するのは、その世界観をいかに構築するか、ということなんだけど、絶対的な知識量があれば描けますよね。
「鎌倉の物語を描きましょう」となった時に、今の鎌倉の生活なら描けると思うんです。
でも、鎌倉幕府の歴史を踏まえて描けるかといったら難しい。
そういう時にほころびが生じると、読者の人にも伝わりますよね。
その点、鹿島先生は「もう良いですよ」というくらいの知識があるんです。
そういう人が書いた本にはあふれ出る情報量があって、ちょっと読んだだけでも相当な栄養をもらうことができる。私もそのおかげで『鼻下長』を描けているんだと思いますね。

2015/09/22 6:58

『季刊エス』インタビューより①ー安野モヨコが今、パリの娼婦を描いた理由ー

先日発売された『季刊エス』に掲載された安野モヨコのインタビューを、本日から特別公開。

本日は安野モヨコが”なぜ今、パリを舞台として娼婦を描いたのか”を、インタビューを抜粋してお届けいたします。

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―安野さんは、娼婦の生き方とビジュアル面の両方に興味があって今回の『鼻下長』を描かれたんでしょうか。

安野:そうですね。結局は、今と何も変わらないんですよ。
若い女の子がおしゃれをしたい、美味しいものも食べたい、といった時に、働けなかったらやることは一つ。
それは古今東西どの国でもそうなんだけど、私は今の日本とすごくカブるな、と思った。
生活苦で売春をする子もいるんだけど、ただ贅沢がしたくて売春をする子もいる。
当時のパリでは、お洋服屋さんの女店主が手引きをしたのよ。
今だったら、セレクトショップで「あー、このマーク・ジェイコブズ欲しい!でも、先月あれを買っちゃったしな…。もうクレジットカードの分割も使いまくっているし…」と言う女の子に、ショップの人が「じゃあ、もう一個方法があるけど、どうする?」と言うようなものですよね。
そこで、どうしても欲しい!と思った女の子は、一回は我慢をしても、もう一回そういう誘いをされると、そこから崩れていく。
一度入ったらもう平気になるしね。

―鹿島さんの『パリ、娼婦の館』『パリ、娼婦の街』を読んで印象的だったのは、一九世紀末にはじめてパリにデパートが出来たことの衝撃でした。
注文しなくても、店に行けば商品がズラッと並んでいるという光景がはじめて起こった。
女性たちは「お金があればこれが手に入る!」と思ったことで、衝動的に大金が欲しくなる…。

安野:「もっと良いものがあるよ?」という感じですよね。
手袋だって、それまでは寒いからしていたのに、すごく贅沢な手袋を見てしまえば「わー!」と欲しくなっちゃう。

―でも、当時は女性がお金を稼ぐ方法があまりなかった…。

安野:あっても低賃金だしね。お針子さんとかばっかりで。それが今の日本と似ていると思います。

―安野さんは叙情画を描いた時も、昔の叙情画風ではなく、現代の叙情、現代の女性像を描きたいと言っていましたよね。
「欲望の話」を描く場合、それこそ『pink』や『ヘルタースケルター』みたいに、現代を舞台に売春やモデル仕事を描くこともできたと思うんですが、直接的に現代のモチーフを選ばなかった。あえて違う舞台にしようと思ったんでしょうか。

安野:やっぱり今を舞台にして現実的に描いたら救いがなくなっちゃうから。読んでいる人が拒否反応を示す話になっちゃうと思って。格好良くしないで描きたいところもありましたし。時代をスライドさせることによって、描きたいことをストレートに描くことができる、というのはあります。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

2015/09/21 7:00