News | MOYOCO ANNO - Part 31

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『季刊エス』インタビューより③ーパリ取材で、安野モヨコが出会ったものー

2015/09/23 7:25

―そんな設定も考えられていたんですか。それも大変な…。それでは次に娼館のデザインのお話に移りたいのですが、当時のインテリアなどはいろいろ見たりされましたか?

安野:パリに何回か取材に行きました。向こうでしか買えないメゾン・クローズの資料とか写真集もあるし。お勘定書きとかお品書きの写真とかね。
あと、建物の設計図。お部屋の中をこう区切って小部屋を三つ作ったとかがわかるんです。
あとは、その当時のパリの地図。どこにどの店があったのかを調べて、実際にその店に行ったりしました。
パリは景観を保存しているから、全部建物が残っているんです。
スファンクスがあった場所でも写真を撮らせてもらいました。階段とかはそのままなの。
お客さんが来る階までは手すりが凄く豪華なんだけど、女の人たちの居住区だった六階から七階は急に超簡素だった。
ハッキリとお金をかけていないんです。
あと地下室にも入ることができて、そこはちょっと驚愕するところでしたね。
今は物置なんだけど、けっこう手つかずで残っていて、作りが完全に秘密の接待部屋なんですよ。
だから、地下に降りる階段もおしゃれなタイルだった。お客様の外套をかけるフックとか、すごく装飾的な椅子とかアコーディオン型のストーブもあってカッコ良かったですよ。

その時の取材はラッキーなことばかりで、有名な娼館だったワン・トゥー・トゥーの建物に行った時は、職人のおじいさんが入口のリノベーションをしていたんです。
「この建物の写真を撮りたいんだけど」と言ったら、「何でだい?」と聞かれたので、
理由を説明をしたら、おじいさんは昔そこが娼館だったことを知っていて、「君たちはすごくラッキーだよ」と。
その時、まさに当時の扉を取り外すところだったの。
「この扉が当時のままここにあるのは、今しかないんだよ。だから、必要なら写真を撮りなさい」と言われて、いっぱい撮った。
専門的な人が見れば、蝶番の形で扉の年代が分かるんだって。

―漫画で描きたいと思うデザインがたくさんありそうですね。

安野:そうですね。でも、『鼻下長』のメゾン・クローズは豪華なところじゃなくて、わりと中堅クラスなんです。
取材の時に、超お金持ちになった高級娼婦のお屋敷を見に行ったんだけど、それはちょっとした城くらいのものだった。
装飾が凄すぎて、逆に描くのが大変過ぎる(笑)。

―娼館がどんどん華美になっていく感じは異常ですよね。

安野:競争みたいなものだったんじゃないかな。
「向こうが金箔を貼るなら、こっちはダイヤモンドだ!」みたいな。
昔の人ならではの素朴な感情で、無邪気なくらいですよね。
有名なのは、ルイ一五世様式の本物のベッドを競り落として、その上での「ルイ一五世プレイ」を売りにしていたりとか(笑)。
何が楽しいのか、さっぱり分からないけど(笑)。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

『季刊エス』インタビューより②ー安野モヨコが見た、文化の循環ー

2015/09/22 6:58

―『鼻下長紳士回顧録』(以下、『鼻下長』と略記)は二〇世紀初頭のパリが舞台ですよね。
以前、安野さんにポショワールのお話を伺いましたが、それも二〇世紀初頭のファッションプレートでよく使われた技法でしたね。バルビエの絵とか。

安野:あの時代のファッションプレートは、今のファッション誌に当たるものですからね。
今季の新しいモードをあれで配っていた。商業と美術の融合ぶりが私の好みなんです。
だって、お洋服が素敵でも売れなかったらしょうがない。
ただ洋服だけを描けば良いわけではなくて、お洋服を含めたシチュエーションを素敵に描いて、
「こんな風になりたいわ」と女の人に思わせなきゃダメでしょ。そのバランスが私のやりたいことに近いんです。

―全体的なデザインも素敵ですね。

安野:あの時代の洋服が好き、ということもあると思います。なぜ良いかというと、あの時代までは全部手縫いなんですよ。
人が裁断して手で縫った服というのは、着た時の立体感、フィット感がぜんぜん違う。
昔の写真が素敵に見えるのは、貧乏な人でも、着ている上着は人が縫ったものだからだと思います。
私たちは普通、機械で縫った大量生産の服を着ているじゃない?
気軽に着られるし、良いところもいっぱいあるんだけど、やっぱり何か違う。
言葉ではうまく説明できないけど、絵にすると変わってくるんですよ。
家具もそうだし、室内にあるものも全部そうだと思う。だから、絵としてはそういうものを描いていきたいと思います。

―あと、ポショワールで描かれたファッションプレートは、シルエットで見せるようなスタイルで、ポップな面もありますよね。それは漫画と親和性がある気がします。

安野:省略して見せる感じでね。少女漫画家たちも影響を受けていると思います。
バルビエを好きになって、改めて見てみたら、「私が子供の頃に好きだったこの先生のイラストは、ここからインスピレーションを受けていたんだ」と思ったものがいっぱいあります。
あと、日本の叙情画もかなり影響を受けていると思う。構図とかバランスもね。
ただ、もともとバルビエたちは浮世絵の影響で生まれたものなんですよね。
それを、また日本人が良いと思って取り入れる。文化交換というか、循環している感じがありますね。

―面白いですね。今はまた、日本の漫画が世界に影響を与えていますし、本当に循環していると思います。
バルビエといえば、『鼻下長』に協力としてクレジットされている鹿島茂さんはバルビエのコレクターで評論も書かれています。
安野さんは鹿島さんと対談もされていますが、どんな刺激を受けましたか?

安野:鹿島先生は尋常じゃないお金を古本に使っているんですよ。
たくさんエッセイを書いているけど、それも全部古本を買うためですから。
そういう「やり切り感」に、私は昔の世代の人の凄さを感じる。
今でもオタクのコレクターはいるけど、古本の場合は買うことにも技術が要りますよね。
お金さえ出せば誰でも買えるわけじゃなくて。古本屋の主人との駆け引きも必要。
いつも良い本を買って「さすがだね」と思われているからこそ、次に入荷する特別な本を教えてもらえたりする。
長年の積み重ねもあるんですよね。そうして買った本をたくさん読んで、自分の家の裏庭のようにパリのことを語っておられる。
漫画を描いていて苦労するのは、その世界観をいかに構築するか、ということなんだけど、絶対的な知識量があれば描けますよね。
「鎌倉の物語を描きましょう」となった時に、今の鎌倉の生活なら描けると思うんです。
でも、鎌倉幕府の歴史を踏まえて描けるかといったら難しい。
そういう時にほころびが生じると、読者の人にも伝わりますよね。
その点、鹿島先生は「もう良いですよ」というくらいの知識があるんです。
そういう人が書いた本にはあふれ出る情報量があって、ちょっと読んだだけでも相当な栄養をもらうことができる。私もそのおかげで『鼻下長』を描けているんだと思いますね。

『季刊エス』インタビューより①ー安野モヨコが今、パリの娼婦を描いた理由ー

2015/09/21 7:00

先日発売された『季刊エス』に掲載された安野モヨコのインタビューを、本日から特別公開。

本日は安野モヨコが”なぜ今、パリを舞台として娼婦を描いたのか”を、インタビューを抜粋してお届けいたします。

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―安野さんは、娼婦の生き方とビジュアル面の両方に興味があって今回の『鼻下長』を描かれたんでしょうか。

安野:そうですね。結局は、今と何も変わらないんですよ。
若い女の子がおしゃれをしたい、美味しいものも食べたい、といった時に、働けなかったらやることは一つ。
それは古今東西どの国でもそうなんだけど、私は今の日本とすごくカブるな、と思った。
生活苦で売春をする子もいるんだけど、ただ贅沢がしたくて売春をする子もいる。
当時のパリでは、お洋服屋さんの女店主が手引きをしたのよ。
今だったら、セレクトショップで「あー、このマーク・ジェイコブズ欲しい!でも、先月あれを買っちゃったしな…。もうクレジットカードの分割も使いまくっているし…」と言う女の子に、ショップの人が「じゃあ、もう一個方法があるけど、どうする?」と言うようなものですよね。
そこで、どうしても欲しい!と思った女の子は、一回は我慢をしても、もう一回そういう誘いをされると、そこから崩れていく。
一度入ったらもう平気になるしね。

―鹿島さんの『パリ、娼婦の館』『パリ、娼婦の街』を読んで印象的だったのは、一九世紀末にはじめてパリにデパートが出来たことの衝撃でした。
注文しなくても、店に行けば商品がズラッと並んでいるという光景がはじめて起こった。
女性たちは「お金があればこれが手に入る!」と思ったことで、衝動的に大金が欲しくなる…。

安野:「もっと良いものがあるよ?」という感じですよね。
手袋だって、それまでは寒いからしていたのに、すごく贅沢な手袋を見てしまえば「わー!」と欲しくなっちゃう。

―でも、当時は女性がお金を稼ぐ方法があまりなかった…。

安野:あっても低賃金だしね。お針子さんとかばっかりで。それが今の日本と似ていると思います。

―安野さんは叙情画を描いた時も、昔の叙情画風ではなく、現代の叙情、現代の女性像を描きたいと言っていましたよね。
「欲望の話」を描く場合、それこそ『pink』や『ヘルタースケルター』みたいに、現代を舞台に売春やモデル仕事を描くこともできたと思うんですが、直接的に現代のモチーフを選ばなかった。あえて違う舞台にしようと思ったんでしょうか。

安野:やっぱり今を舞台にして現実的に描いたら救いがなくなっちゃうから。読んでいる人が拒否反応を示す話になっちゃうと思って。格好良くしないで描きたいところもありましたし。時代をスライドさせることによって、描きたいことをストレートに描くことができる、というのはあります。

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現在発売中の、安野モヨコが表紙イラストを手がけた『季刊エス』10月号。
インタビューのほか、イラストのメイキングも掲載されています!

(スタッフ・美帆)

掲載情報・『季刊エス』が本日発売

2015/09/15 7:50

安野モヨコのインタビューが掲載、そして表紙イラストを務めた『季刊エス』が

本日9月15日に発売されました!

表紙はこちら・・・

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10月8日に上巻が発売される新作、『鼻下長紳士回顧録』のヒロイン・コレットです♪

『季刊エス』では表紙のメイキングや、鼻下長紳士回顧録の裏話をたっぷりと語っております!

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みなさまぜひ、ご覧くださいね♪

(スタッフ・美帆)

『鼻下長紳士回顧録』コラボランジェリーセット、単行本を9月26日に予約販売スタート!

2015/09/07 7:00

いよいよ発表!

安野モヨコデザインの限定のランジェリーセット、そして『鼻下長紳士回顧録』上巻の予約販売を9月26日に開始します!

ストーリー漫画としては約8年ぶりとなる今回の新作…

単行本は、豪華版と普及版の2種類をご用意しております♪

安野モヨコ公式ショップでは、特典もありますのでお楽しみに!

ティザーサイトもぜひチェックしてみてくださいね。

http://annomoyoco.com/lp/lingerie/

(美帆)

 

鼻下長LP告知

新企画”MY MINTIA MAKER”が本日スタート!

2015/09/01 4:58

いよいよ発表!本日から新企画、MY MINTIA MAKERがスタートしました!
あなたとキャラクターたちがスペシャルコラボ♡オリジナルミンティアを作りませんか?

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キャラクターのパーツを組み合わせて、オリジナルデザインのMINTIAをつくることができます!
自分の似顔絵や理想の働きマンの姿、オチビサンの新しい仲間…
楽しみ方は自由!『働きマン』と『オチビサン』、お好きな作品で考えてみてくださいね♪

作成したデザインは画像として使えるほか、実際にそのMINTIAやシールが手に入るチャンスも⭐︎

ちなみにスタッフ美帆が作ったMY MINTIAは…
野川由実に、松方弘子の力強い眼差しを組み合わせた働きマン!
“由実のように穏やかに、そしていつだって弘子のように前を向いている働きマンになりたい”
そんな思いを込めて理想の働きマンをデザインにしました!

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みなさんもぜひ、MY MINTIAをつくったら #MYMINTIAMAKER のハッシュタグで教えてください♡

MY MINTIAをつくる→http://mintiamaker.jp/

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安野モヨコ公式サイト:http://annomoyoco.com/
『オチビサン』公式サイト:http://ochibisan.com/

あのキャラクターたちと作る、あなただけのリフレッシュスイッチ

2015/08/31 8:09

今日から月曜日がスタート!
お仕事に勉強に、慌ただしい毎日が始まる方も多いと思います。

「憂鬱だな」「何か良い刺激がほしい」「やる気スイッチはどこ?」「癒しがほしい」
頑張っているからこそ、しんどくなってしまうことってありますよね。

そんなときに、みなさんの気持ちをすっきり前向きにしてくれるあのアイテムと、安野モヨコの作品がコラボ!
眩しいくらいにエネルギッシュなあのスーパーウーマンや、
ほのぼのかわいらしいあのキャラクターと一緒に、あなただけのオリジナルアイテムが作れちゃいます☆

詳細は、明日公開です♡どうぞお楽しみに!

 

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『MORE』10月号に『働きマン』が掲載されました!

2015/08/28 5:07

本日発売の『MORE』10月号”オススメ恋呼びカルチャー”に『働きマン』が掲載♡

“迷わず仕事をとる自分がかっこいいなんて思ってない(全く)

そんなことどうでもいい

この先にあるものを思えば”

仕事も恋も、両方大事。だけど今は、諦めたくない仕事がある…!

まっすぐすぎるヒロイン・松方弘子の仕事&恋愛事情を描いた『働きマン』を、

ぜひチェックしてみてくださいね♪

当サイトのコミックコーナーでは試し読みをご用意しております

(スタッフ・美帆)

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